Oze-0w0’s diary

大学生ですよ。

残り■日、いきたかった世界①

 

 ぼんやりと目をあける。

 

 そこにはスーツを着た1人の男性がデスクに向かって何か作業をしているようだった。

 

 時折眠たそうに目を擦りながら黙々と作業を続けている。

 

 僕はあたりを見渡した。

 そこは何処かのオフィスの用で、外はもう真っ暗だ。

 

 それからしばらくすると、同じように作業をしていた中年男性がパソコンの電源を落とし、荷物を鞄に詰めて立ち上がると、声をかけた。

 

 「おい、資料作りはもう終わったか。俺はもう帰るがしっかりと資料は作っとけよ。明日は大事なプレゼンがあるかならな。」

 

 「はい、分かりました。お気をつけてお帰りください。先輩。」

 

 「おう、またな。」

 

 どうやら中年の男性と目の前の男性は先輩後輩の関係らしい。

 

 それから2時間ほど経つと作業が終わったのか、男性は帰り支度をはじめた。

 

 「はぁ、もう辞めようかな。でもなー。」

 

 どうやらこの会社を辞めたいらしい。もし、僕だったら何かと理由をつけてだらだらやるんだろう。

 

 男性は帰り支度を済ませるとタメ息を吐きながら部屋を出ていった。

 

 

 するとチャンネルが変わるように視界が変わった。

 

 

 今度はどこか冴えない不幸そうな中年の男性が自宅であろう洗面台で顔を洗っている。

 

 男はタメ息を吐きながら鏡を見て呟くように言った。

 

 「変わりたい。」

 

 すると今度はどこかの居酒屋で見覚えのある男と酒を交わし話していた。

 

 「で?最近どうよ?」

 

 男は中年の男性、僕とは真逆で活気に満ち溢れたようにきいてきた。

 

 「まぁ、まずまずだよ。」

 

 僕は彼に誤魔化すように、見栄を張るように言った。

 

 彼はそんな僕を見ると頭を左右に振りながら諭すように言ってきた。

 

 「かぁー!そんな生活楽しいか?いい加減結婚したらどうよ?俺が紹介してやろうか?」

 

 「いいよ、別に。結婚したいとも思ってないし。」

 

 嘘だ。実は思ってる。彼のように成功して、美人な妻を持って幸せになれるなら成りたい。

 

 「だいたいよぉ、お前はいつもそうなんだ。前だって俺が会社を創る時に誘った時も、すぐに断りやがって。」

 

 そう、僕は断った。確かにあの時誘いに乗っておけば、今頃は幸せに暮らしていたかもしれないけど、彼とは友達のままでいたかったから。

 

 僕と彼はそのまま深夜まで飲み続け、店主に追い出されるように店を出た。

 

 「じゃあ、俺は帰るけどよ、何かあったら俺に言うんだぞ?力になるからよぉ。」

 

 「分かったよ。何かあったら連絡するから、気を付けて帰ってよ?」

 

 「なら良いけどよぉ。じゃあ、帰るわ。またな。」

 

 彼は意気揚々と鼻歌を歌いながら帰っていった。

 

 僕は彼を見送った後、近くのベンチに腰を掛けて大学時代のことを思い出した。

 

 いつからここまで差が出来たんだろうか。

 

 いや、もともとあった差が目に見えて現れただけかもな。なんて自嘲しながらも思う。

 

 僕も彼みたいにもっと積極的になれたら、今より幸せに成れたのかな。

 

 僕は重い足取りで家に帰ってシャワーを浴びて寝た。

 

 僕はその様子を眺めると、家の中を見渡して気付いた。

 

 家の机の上には自己啓発やら成功者の法則やらの本が積み重なっていたのだ。

 

 僕は寝ている僕を見て思う。

 結局、変わっていないんだな。

 

 期待していた。

 未来の僕が見れると聞いた時、きっと幸せになってるって、どうにかなっているって。

 

 でもこの有り様だった。

 

 僕は僕のままだったらしい。

 

 「そりゃあ、そうでしょ。彼は君なんだから。」

 

 気が付くとクロがそばにいた。

 

 「この光景を見て、どう思った?誇らしいと思うかい?」

 

 クロが問いかけてくる。

 

 「僕はね、思うんだよ。君が100日後に死ぬ道と、この君が生きたかった道。何か違うの?同じだよねって。」

 

 「だからこそ僕は焦ってる。君を100日で変えれるかって。満足して死ねるように出来るかってね。」

 

 前までの僕だったら何かしら反論しただろう、だけど今、この光景を見せられて反論なんか出来なかった。

 

 「今からこの道の果てを見せてあげる。そして君はこの道の果てにいる君に何か質問して見ると良い。大丈夫、何も問題はないから。」

 

 クロがそう言うと、また視界が変わった。

 

 

 1人の老人が病院の管に繋がれ独り寂しそうに外を眺めている。

 

 「ほら、あれがこの道の果てにいる君さ。」

 

 クロはそう言って指を指した。

 

 「色々聞いてくるといい、きっとそれは君が変わる鍵になるから。」

 

 僕は僕に近付いた。

 

 「どうも、こんにちわ。」

 

 老人である僕はゆっくりとこっちに振り向くと目を細めて挨拶を返してきた。

 

 「こんにちわ。すまんの、間違いだった悪いんじゃがどこかで会ったことはあるかの?」

 

 「いえ、初対面です。」

 

 僕は僕なんだからそりゃ見覚えがあっても可笑しくない。普通に返した。

 

 「それで何か用かの?」

 

 「幸せでしたか?」

 

 僕は初対面でこんなことをいきなり聞くのは可笑しいと思うが、どうしても聞きたかった。

 

 窓の外を寂しそうに見ているのを見て、聞きたかったのだ。

 

 「幸せではなかったのぅ。この老いぼれにそんなことを聞くんじゃ、何かあるんじゃろう?」

 

 年老いた僕は不思議そうに僕に言ったが、特に追及しくることは無かった。

 

 「まぁ、良い。少しわしの話を聞いてくれんか?」

 

 年老いた僕は、喋りたかったのかこちらの返事を聞く前に語りはじめた。